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レーザーによる屈折矯正手術(レーシックなど) -2009年9月14日-

屈折異常(近視、遠視、乱視)を矯正するレーザー治療がマスコミ等で大きく取り上げられています。この治療法に興味を抱く方がたくさんおられると思います。この治療法についての簡単な説明と、現在問題になっていることを述べます。

日本眼科医会のホームページにレーシックについての説明文があります(この説明文は日本眼科医会医療対策部が作成し、当院の院長も関わりました)この説明文を少し書き直したものを以下に記します。

黒目(角膜)に特殊なレーザー(エキシマレーザー)を照射して、角膜の一部を薄くすることによって屈折異常を矯正する手術にはいくつかの方法があります。
角膜をレーザーを照射する前に、角膜表面にフラップを作る方法を特にLASIK(レーシック)と呼びますが、フラップの作り方によって、LASEK(ラセック)とか、EPI-LASIK(エピレーシック)などと表現することもあります。また、フラップを作らないでレーザーを照射する方法をPRK(ピー・アール・ケイ)といいます。

レーザーによる屈折矯正手術のメリットとデメリット
裸眼で物を見ることを目的とした手術ですから、眼鏡やコンタクトレンズから開放されるというメリットがあります。眼鏡のわずらわしさやコンタクトレンズ装用時の異物感や乾燥感に悩まされている人には、これらが不要になるという大きなメリットがあります。
しかし、この手術で矯正できる度数には限度がありますので、高度の近視や乱視の人では十分に矯正できないことがあります。矯正できる量には個人差があります。また、術後の近視や乱視の進行を止める効果はありません。このために18歳未満ではレーシックは適応ではありません。
40歳以上の方では調節力の低下、いわゆる老眼が始まりますが、レーシックで老眼を矯正することはできません。このため手術によって遠方の視力が向上しても、近くが見えにくくなることがあります。
また、手術には合併症やリスクがつきもので、そうしたデメリットについて、よく理解することが大切です。主なデメリットを以下にお示しします。
・夜間に視力が低下する
夜間の光がまぶしく、にじんだように見えることがあります。
・術後に角膜が変形する
レーザーで薄くした角膜は元通りには戻すことはできません。高度な近視では術後に薄くなった角膜が前方に突出して角膜が不正な形に変形して視力が低下してくることが稀にあります。こうなると、ハードコンタクトレンズによる矯正でしか視力補正ができなくなります。
・術後に角膜が混濁する
角膜中央部をレーザーで薄くするため、角膜に混濁が生じる可能性があります。眼鏡やコンタクトレンズで視力を補正できていた人が、手術を受けたために、かえって視力が低下してしまう可能性があります。
術後に生じた感染症で、重度では角膜混濁や菲薄化、変形が起きて、最悪の場合は角膜移植が必要となったり、失明に至ることもあります(レーシック術後の角膜感染症については後述します)。
・ドライアイになる
レーザー照射の前にフラップを作製するため、角膜の知覚神経が切断され、術後数カ月から1年くらいの間、ドライアイになることがあります。これは時間とともに徐々に回復してきますが、回復には個人差があります。
・度数の変化によって視力が低下する
術後、屈折矯正効果の戻りなどの変化が起きることがあります。角膜のレーザーで薄くなった部分が突出してくるためではないかと考えられています。多くの場合はレーザーの再照射(再手術)によって補正できますが、残った角膜の厚みや矯正度数の問題で再手術ができないこともあります。
・正確な眼圧測定ができなくなる
術後には角膜が薄くなり変形するので、眼圧測定値が低めに出たり、時には眼圧の測定ができなくなることもあります。日本人は緑内障が多く、40歳以上のうち5%が緑内障に罹患しているという研究結果が出ています。術後には眼圧が正確に測定できないために、緑内障になっても見逃されてしまう可能性があります。
・正確な白内障手術ができなくなる
将来、白内障の手術をされるときは、濁った水晶体の代わりに入れる眼内レンズによって屈折矯正をするのですが、レーザーによる屈折矯正手術後には、この眼内レンズの度数を正確に計算できなくなります。白内障手術の際には、参考データとして、屈折矯正手術をする以前の目のデータと手術内容の記録が必要となります。
・屈折矯正手術を受ける場合は眼科専門医で
手術を希望される場合には、必ず眼科専門医の診察を受けて、詳しい説明を聞いてください。眼科専門医とは、日本眼科学会、日本眼科医会の会員であり、その上で眼科手術を含んだ5~6年以上の臨床研修を修了し、眼科専門医の認定を受けた医師です。眼科専門医を取得しないまま、レーシック専門医を謳って手術を行っている医師もおります。眼科専門医の資格の有無は手術施設を選ぶときの判断基準になります。
日本眼科学会の「エキシマレーザー屈折矯正手術のガイドライン」では、「術者は眼科専門医であると同時に、角膜の生理や疾患ならびに眼光学に精通していることが術者としての必須条件である」とされており、「本装置の使用に際しては,日本眼科学会の指定する屈折矯正手術講習会,および製造業者が実施する設置時講習会の両者を受講することが必要である」と定められています。
・屈折矯正手術とその前後の診療は保険が利きません
手術は保険外診療のため、手術の前後に関わる検査・手技を含んだ全ての診療費は自費となります。術後の検査を近所の眼科診療所で受ける場合にも、「自費診療」が原則です。手術を行なった同一医療機関で一貫して眼の状態を診てもらうことが基本です。
手術を受ける際には、手術の費用のなかに術後の検査や薬剤の費用が含まれているか、どのくらいの期間責任を持って診察してもらえるか、十分に確認することをお勧めします。レーシックによる感染予防、術前術後の定期検査などを徹底すると、手術の費用は相応にかかるものと考えてください。目先の費用だけにとらわれず、自分の目は自分で守ると意識するが大切です。

レーシック術後の角膜感染症
レーシックの術後に角膜感染症が数多く発症したことがマスコミに大きく報じられました。2009年8月11日に報じられた時事通信を抜粋します。

眼科医関係先を家宅捜索=数カ所、業過傷害容疑-視力矯正手術で角膜炎感染・警視庁 
2009年8月11日(火)12:03  (時事通信)
東京都中央区の「銀座眼科」(閉鎖)で角膜にレーザーを照射し視力矯正する「レーシック手術」を受けた患者が角膜炎などに感染した問題で、警視庁捜査1課と築地署は11日、業務上過失傷害容疑で、関係先として、さいたま市浦和区の眼科医院など数カ所を家宅捜索した。
同課によると、捜索容疑は被疑者不詳で、1月に銀座眼科で同手術を受けた30代女性に対し、感染性角膜炎を発症させた疑い。
中央区保健所は2月、別の医療機関から感染者発生の連絡を受け、同眼科を立ち入り調査。その後、75人が感染性角膜炎や結膜炎を発症したと発表した。
同保健所によると、銀座眼科では手術器具の消毒が不十分であったほか、施設全体の衛生管理に問題があったとみられる。
同眼科によると、消毒用機械は2006年8月の開院以来、1回も点検していなかったという。
被害者50人は先月、溝口朝雄元院長らに対し、計約1億3300万円の賠償を求めて東京地裁に提訴し、一部は傷害容疑で同署に告訴。厚生労働省には元院長の医師免許取り消しを求める要望書を提出した。

これは東京の銀座眼科の事件ですが、手術器具の滅菌消毒の不具合など衛生面に問題があったと考えられています。術後角膜感染症が絶対に起こることはないとは言いきれませんが、このように同一医療機関で続けて多発するような事例は過去にはありませんでした。
日本眼科学会は「エキシマレーザー屈折矯正手術のガイドライン」を定めており、手術は清潔な環境で行なうことや、術野の消毒を厳格に行なうことを記述しております。さらに、レーシックを初めとする屈折矯正手術は日本眼科学会が認定する眼科専門医が、屈折矯正手術講習会を受講した上で行うべきであることも定めていますが、この銀座眼科の医師は上述した眼科専門医ではありませんでした。
屈折矯正手術を行うにあたっては、屈折異常における知識だけでなく、角膜や感染症の治療など眼科に関する広い知識が求められます。
銀座眼科に限らず、他の医療機関においても、手術を行った医師が眼科専門医ではない事例があるようです。
眼科専門医による検査と詳しい説明を聞かれた上で、手術を受けることをおすすめします。なお、眼科専門医は日本眼科学会のウェブページ(http://www.nichigan.or.jp/index.jsp)で確認することができます。
日本眼科学会のウェブページに「レーシック術後の角膜感染症多発事件について」(http://www.nichigan.or.jp/news/013.jsp)の説明文が掲載されているのでご覧ください。
追記
上記以外にレーシックについてはいろいろな問題があります。最近掲載された記事を抜粋します。
●割引き広告に警告 公取委 期間限定は不当表示(2009年8月7日 日本経済新聞朝刊)



●週刊文春(8月6日号)