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私のマラソン記 太陽の光を浴びていますか? 風を感じていますか?

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太陽の光を浴びていますか?  風を感じていますか?

                            ウエダ眼科 植田喜一
 突然ですが、皆さんはジョギングとランニングの違いをご存知ですか?ジョギングは楽しく走ること、一方、ランニングは競技として距離やタイムを目標にして走ることだと思います。私たちは今さらアスリートになることを目指すわけではないので、健康のため、ダイエットや美容のためでも構いません。とにかく楽しく走ることが求められます。
走ることに関心のない人からすれば、「どうして好き好んで走るんだろう?」などと言われるかもしれませんが、普通の生活をしていたのでは得られないような充実感や満足感を感じることができます。それは走り終えたという達成感、いい汗をかいたという爽快感、健康にいいことをしたという満足感だけではありません。
四季の変化に敏感になります。私達眼科医は一日の大半を暗室で過ごすので、まるでモグラのようです。しかしながら、走り始めると庭や野に咲く花や草木、空を飛ぶ鳥や虫、川を泳ぐ魚など目にするものだけでなく、鳥のさえずりや虫の声、大気の匂い、温度、湿度、風の向きや強さ、陽射しの強さ、土の硬さなどから季節の微妙な変化がわかります。走ることによってまさに自然の中に身を置いているという感じになります。
自分自身の体調の変化にも敏感になります。今日は何となく体が重たくてペースが上がらない、いつもと同じペースで走っているのにきつい感じがする、汗をかく量が多い、走った後に疲労感があるなどの場合は、体調を崩しかけている前兆ですから、十分な休養をとり、しっかり栄養を摂って早く寝ます。また、運動をすると、口にするものすべてがおいしく感じられ、寝付きや寝起きがよくなり、睡眠も深くなります。私は走り始めてからは風邪も引くこともなくなり、健康そのものです。筋肉にはエアロビック筋とアネロビック筋があり、エアロビック筋は少ない量でもたくさんのエネルギーを作り出す脂肪を主に、またアネロビック筋は主に糖を使って動きます。エアロビック筋を鍛えてその活動を活発にすると、血液中の糖ではなく脂肪をエネルギー源にして運動できる身体になるといいます。脂肪をエネルギー源にできるようになると、肉体的にも精神的にも疲れにくい体質に改善できます。
普段の食生活についても注意を払うようになります。カロリーを気にするだけでなく、なるべく栄養のバランスを考え、体にとってよい食品を摂りたいと考えるようになります。私は市販のカロリーブックを参照して、肉や魚、野菜、調味料などの重量当たりのカロリーや栄養素だけでなく、外食やおやつなどのカロリーや栄養素を見るようになりました。普段の生活で大体自分がどれだけのカロリーと栄養素を摂っているかを知ることで、食事や栄養のバランスに気をつけるという意識が芽生えてきました。
適度な運動とバランスの取れた食事によって、体はシェイプアップされてきます。これまできつかった服が楽に着れるようになると何となく嬉しい気分になります。スリムになると服の選択が拡がるだけでなく、肌を露出することにも抵抗がなくなります。そして、肌の張りやつやもよくなり、若く見られるようになります。私はというと、最近かなり走りこんでいますので、ウエストは約69cmです。ジーパンのサイズは28インチですが、通常のメンズのものではかなり余裕がある状態です。
走ることで生活にリズムが生じます。走る時間を確保するために生活のすべてを調整しなければなりません。朝走るのなら、起床時間だけでなく就寝時間にも気をつけるようになります。昼あるいは夕方走るのなら、午前の仕事あるいは午後の仕事をなるべく効率よく行って定時に終わるよう努力します。結果的に、毎日の生活の中で無駄な時間をなるべく省くことになり、ライフスタイルそのものをよりスリムに変えるようになります。そして、毎日のトレーニングの成果が体力的な面だけでなく、精神的な強さにも繋がってきます。いろいろなことをポジティブに考えるようになり、何事にもチャレンジしようという気持ちになります。
ところで、「ランナーズ・ハイ」という言葉を聞いたことがありますか?走り始めはちょっと息苦しさや体のだるさなどを感じますが、それを少し我慢して走り続けると、徐々に楽になってきます。これは筋肉だけでなく、呼吸器や循環器が走ることに順応してきたためです。脳への血液量が増えると、十分な酸素が供給され、頭もスッキリしてきます。気分も爽快になり、ハイな状態になるため「ランナーズ・ハイ」と呼ばれるのです。私は当初、この「ランナーズ・ハイ」という状態が具体的にはどういうものなのかわかりませんでしたが、走っていることを自覚せずに他のことを考えられる状態が、自分にとって「ランナーズ・ハイ」だということがわかりました。私は好きなサザンオールスターズの曲をMDで聴きながら、リズムに合わせて走っていますが、この間は患者さんのこと、診療所の経営のこと、スタッフの教育のこと、家族のこと、それから眼科医会のこと、コンタクトレンズ学会のこと、講演のスライド原稿のこと、投稿予定の論文原稿のことなど、机に就いている時だけでは巡らせることのできないいろいろなことを考えながら走っています。そこで頭に浮かんだことを後で一つ一つ処理するのですが、多くのことが浮かぶとそのすべてを覚えておくことができなくなります。せっかくいいアイデアが浮かんだのに、それは何だっただろうかと気になりだすとストレスが溜まります。そこでICレコーダーを首からぶら下げて走ることにしました。頭に浮かんだことを即座に録音してしまえば安心ですし、他のことに思いをはせることができます。
また、いろいろなコースを走ることで新たな発見があります。こんな場所にこんな建造物(商店、寺や神社、石碑など)があったんだ。このお店は安くていい商品が数多く置いているみたいだから今度買い物に来よう。このお店は感じがよくておいしい物を食べさせてくれそうだから、一度友人と食べに来ようなどと考えながら走っています。
毎日走っているとトレーニングの成果が知りたくて、何となく大会に出てみようかという気分になります。市民を対象とした気楽に参加できる大会は数多くあるので、練習のつもりで、短い距離、例えば3km、5km、10kmの大会に参加しようかと思うようになります。大会の独特の雰囲気の中、少し緊張感をもっていつもと違うコースを走るのは新鮮味があってとても刺激的です。とくに初めて参加する大会はどんな大会なのかと想像するだけでも興奮します。
私は休日を利用して各地で開催されるマラソン大会に出場しています。今年に入って、まず、最近では1月11日に鹿児島県指宿市で開催された「第23回いぶすき菜の花マラソン」に出場し、フルマラソン42.195kmを走りました。当日は天候にも恵まれ、『フルマラソンを3時間台で走る』という目標を達成することができました。この大会は今年で3回目でしたが、沿道には満開の菜の花が咲き、池田湖、開聞岳などを一望するコースは何度走っても気持ちが良く、好きな大会の一つです。この大会は以前の会報にも書きましたが、仲間と一緒に走ります。しかし、それ以外の多くの大会は一人で参加しています。一人は一人でそれなりに楽しみがあります。抜きつ抜かれつしたランナーに、ゴールした後に声をかけ握手をします。なんとなく友人ができたような気分になります。そして大会が開催された近くにある温泉に行って、一人ゆっくり自己満足に浸ることができます。私が今年になって参加した、あるいは5月までに参加を予定している大会を表1に示します。いろいろな都合で参加できない大会もあるでしょうが、なるべく時間をつくってエンジョイしてきたいと思います。
これらの大会の中で、5月3日に開催される「第16回山口100萩往還マラニック大会」のことに少し触れます。テレビ番組『24時間テレビ「愛は地球を救う」』の中で芸能人が24時間マラソンをしていることに影響を受けたわけではありませんが、フルマラソン42.195kmよりも長い距離を一度、走ってみたいと思うようになりました。マラニックという言葉はマラソンとピクニックを合わせた造語で、簡単にいえばピクニック気分で長距離を走ってみようということです。この大会ではいろいろなコースが企画されていますが、12時間以内で70kmと24時間以内で140kmを走るどちらかのコースに参加することを思い立ちました。私にとって70km以上というのは未知の世界ですから、一度試しに長い距離を走ってみることにしました。2月8日の日曜日にJR新山口駅(旧小郡駅)から国道を走り始め、当初は私の住むJR新下関駅までの予定でしたが、JR小倉駅まで走りました。途中で30分おきに自動販売機やコンビニ、スーパーでスポーツドリンクやエネルギー補給ゼリー、おまんじゅうなどを買って、水分とエネルギーを十分に確保しつつ、またコンビニやどうしようもないときは路上で用を足しながら、これらの時間を含めてちょうど8時間で走破しました。このペースなら24時間で140kmの距離も走れるだろうと思い、このコースにエントリーすることにしました。この大会の内容はまた機会がありましたら報告します。
2001年の本会報第64号にホノルルマラソンに参加したいきさつを書いたことがありますが、当時は右足を骨折した後で体重も68kgぐらいあって、数百メートル走っただけでゼーゼーハーハーしていました。ダイエットとウォーキングを始めて、少しずつ身体を慣らしてからゆっくりと走り、だんだんと距離を延ばしていきました。そして今では走る楽しみを覚えるようになりました。もし、これからジョギングを始めようと思う人がいれば薦めたい本があります。上述した24時間マラソンで多くの芸能人をゴールに導いたマラソンコーチ坂本雄次著の「あなたもできるフルマラソン あの有名人も成功した完走術」(学習研究社発行)です。山田花子、研ナオコ、西村知美、トミーズ雅等の実体験が述べられていますが、テレビでは放映されなかった興味深いエピソードも紹介されております。また、フォーム作りやトレーニングの方法等についても初心者にとってわかりやすく述べられています。また、「ランナーズ」と「ランニング情報マガジンcourir(クリール)」という月刊誌が出ています。ジョギングやランニングの方法や、体験談などが豊富に掲載されています。大会に参加した人たちのすがすがしい顔を見ると、私も参加しようかなぁという気分になります。また、引き締まった体形を見ると、私も練習してあのようになりたいなぁと思います。格好いいカラフルなスポーツウェアとシューズをみると、シェイプアップされた身体にそれを着てみたいと思うようになります。ジョギングはスポーツウェアとシューズさえあれば一人でいつどこででもできます。
私は学会や講演、会議などで下関市を離れた際にも、スポーツウェアとシューズを宿泊予定のホテルに宅急便で送り、翌朝早く起きて約1時間ジョギングしながら市内観光をすることにしています。事前にどこを走ろうか下調べすることで、その土地を知ることができ、実際にゆっくり走りながらその光景を楽しんでいます。タクシー代もかからず、安上がりです。
ところで皆さん、体重と体脂肪率は気になりますか?男女、年齢による体脂肪率判断のめやすを表2に示します。私は毎日10km以上の距離を走っているのでかなりシェイプアップされています(体重は50~52kg、体脂肪率は10%前後です)。ジョギングと体重の関係にはこんなおもしろい理論があります。脂肪1kgを落とすのには、7000kcalのエネルギー消費が必要と言われています。ジョギングで消費するカロリー(kcal)はおよそ「距離(km)×体重(kg)」なので、ちょうど体重70kgの人が100km走って脂肪1kgを落とせる計算です。ちなみに、ジョギング中のエネルギー消費量は走るスピードに関係なく走行距離に比例するという法則があります。どんなにゆっくり走ろうが、1km走れば体重(kg)分のkcalを消費すると覚えれば、減量メニューがいとも簡単にできあがります。これまで脂肪を燃やすベストな方法は、ゆっくり走ることであると言われてきました。確かに最大心拍数の50~60%の運動強度で走るとき、エネルギーとして使われる脂肪の割合はかなり高くなるのですが、脂肪燃焼のためには、運動の負荷は軽ければ軽いほどいいというものでもありません。最近の報告によると、中程度の強度(最大心拍数の75%)が最も脂肪の燃焼量が多いといわれています。しかも、中程度の強度の特徴は、筋肉内の脂肪燃焼が軽い負荷の10倍にもなるそうです。脂肪を主に使うエアロビック運動の目安としてよく使われているものに「220公式」があります。220から年齢を減じ、その値に50%~85%の数値を掛けることでエアロビック心拍数を求めます(表3)。また、マフェトン博士が開発した健康を増進するためのガイドライン(マフェトン理論)では「180公式」を使います。これは最大エアロビック心拍数を上限とし、180から年齢を減じ、さらに各自の健康状態や競技能力によって加減し、その値からマイナス10回/分の範囲を目標とします(表4)。
たとえば私の場合は45歳で毎日運動しているので、220公式では「(180-45)×0.6~0.7=105~122.5回/分」となり、180公式では「180-45+5=140」で130~140回/分で運動することが目標となります。この状態が正しいエアロビック運動が行われており、効果的に脂肪が燃焼できているといえます。現在、便利な心拍計が市販されています。私もそれを購入して、時計に表示される心拍数を見ながら、自分に適した目標ゾーン内で走ることに努めています。
最後にトレーニングをする際の注意点ですが、トレーニングの前後はストレッチを十分に行い、決して自分自身を追い込まない、走り過ぎない、疲労を引きづらないことです。そして、トレーニングを終えた自分自身の体をやさしくいたわってあげることが大切だと思います。
さて、皆さん、走ることのすばらしさを理解していただけたでしょうか?少しは興味を持っていただけたでしょうか?外に出て、太陽の光を浴び、風を感じてはいかがですか?たとえ無風状態でも走ると自分の周りには心地よい風が吹きますよ!