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第53回日本コンタクトレンズ学会総会

第53回日本コンタクトレンズ学会総会が2010年7月10日、11日に東京の京王プラザホテルで開催されました。この学会に参加した当院の院長の活動を記します。

 1.シンポジウム「シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ」
従来素材のソフトコンタクトレンズに改良を加えた新しい素材のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが注目を浴びています。
院長はこのシンポジウムのオーガナイザーを務めました。



シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズについて以下の4名の先生方に概説をしていただきました。

稲葉昌丸先生(稲葉眼科)「シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズとは」
宮本裕子先生(近畿大学/アイアイ眼科医院)「シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの長所と短所
塩谷 浩先生(しおや眼科)「遠近両用シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの適応と選択」
岩崎直樹先生(イワサキ眼科医院)「シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズのレンズケア」

2.第4回オルソケラトロジー講習会
厚生労働省の承認を得たオルソケラトロジーレンズの処方をするには、眼科専門医であることに加えて、日本眼科学会の主催する講習会と、メーカーの講習会を受けることが義務づけられています。
この講習会は日本眼科学会が主催する講習会です。本講習会では「原理と角膜への影響」、「処方前検査と適応決定」、「処方の手順」、「経過観察・レンズケア」、「合併症と対処法」、「保険と関連法制」についての講演があります。院長は上記のうちの「保険と関連法制」を講演しました。

3.一般講演
1)院長と株式会社オフテクスが共同研究した結果を2題発表しました。以下に抄録を記します。

ⅰ)低温で観察されるシリコーンハイドロゲルレンズの白濁の除去法
  植田喜一1、宮下義輝2、西谷枝里子2、笹沼一博2、山崎勝秀2、斉藤文郎2
1ウエダ眼科、2(株)オフテクス 神戸研究部
【目的】2008年の本学会においてシリコーンハイドロゲルレンズに脂質が付着しやすいことを報告したが、その脂質の有効な除去法が求められる。そこで、脂質が付着したため低温で白濁を観察したレンズについて、その白濁を除去する方法を検討したので報告する。
【方法】1)白濁したアキュビュー®オアシス™(AO)に市販のレンズクリーナー6種(うち1種は研磨剤を含む)を用いてこすり洗いを行った。2)白濁したAOを10種界面活性剤21成分の1~5%水溶液に8時間以上浸漬した。1)2)の処理を行った後にAOの白濁を目視で観察し、処理の前後で比較した。
【結果】1)市販のレンズクリーナーはすべてAOの白濁を除去することができなかった。2)ポリオキシエチレン鎖をもつラウリルエーテルやラウリル硫酸塩がAOの白濁に対して有効であったが、いずれもレンズ自体が膨張した。
【考察】分子構造が直鎖である脂質成分がAOのレンズ内部に浸透して、低温で融点以下になると白濁が観察されると推察する。AOの白濁についてはこすり洗いによる物理的操作では除去できないが、レンズを膨張させる成分は白濁した脂質を可溶化できると考えられた。

ⅱ)ハードコンタクトレンズケースの微生物汚染
  植田喜一1、 宇津見義一2、竹内佑介3、山崎勝秀3
1ウエダ眼科、2宇津見眼科医院、3(株)オフテクス 神戸研究部
【目的】コンタクトレンズ(CL)関連角膜感染症の原因として保存ケースの微生物汚染が問題視されている。ソフトCLに比してハードCL(HCL)は保存ケースの微生物汚染に関する報告が少ない。そこでHCL保存ケースの微生物の汚染状況とケア方法について調べたので報告する。
【方法】1年以上同一のHCLを装用している被験者41名(男性6名、女性35名)から回収したレンズケースの本体とレンズホルダー部分を検査用スワブで拭き取り、その綿球を4mLの生理食塩水に浸漬したものを検体とした。羊血液寒天培地で培養し、検出菌数が1000個/ケース以上を陽性と判定した。大腸菌塗沫無栄養寒天培地で培養し、原虫様微生物を観察した。レンズケースの洗浄方法や交換期間などに関するアンケート調査を行った。
【結果】検体41例中14例が陽性(34.1%)で、ブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌、腸内細菌属、スタフィロコッカス属を検出した。検出菌数が約10万個のケースに原虫様微生物を観察した。レンズのケアは36例が用法を守っていたが、レンズケースの洗浄法は様々であった。陽性14例中にレンズケースの交換期間が6ヶ月以上(交換なしを含む)のものは13例であった。
【考察】レンズケースの微生物汚染率は高いため、レンズケースの洗浄、自然乾燥ならびに短期間での交換を指導することに加えて、微生物に対して消毒効果の高いケア用剤を開発する必要があると考える。



2)現在、コンタクトレンズの使用による角膜感染症が大きな問題になっています。
院長は日本コンタクトレンズ学会と日本眼感染症学会が共同で行っているコンタクトレンズ関連角膜感染症全国調査委員会のメンバーで、患者用アンケート調査の原案を作成しました。
この調査の最終報告を同委員会の宇野敏彦先生が発表されました。以下にその抄録を記します。

コンタクトレンズ関連角膜感染症全国調査患者アンケート最終報告
宇野敏彦1、福田昌彦2
1愛媛大、2近畿大
コンタクトレンズ関連角膜感染症全国調査委員会
【目的】日本コンタクトレンズ(CL)学会と日本眼感染症学会は共同でCL関連角膜感染症全国調査を実施し。中間報告に続き2009年日本臨床眼科学会においてその臨床像について最終報告を行ったが、今回患者アンケートについても2年間の結果をまとめ、CL装用の実態について検討する。
【方法】CL関連角膜感染症で入院治療を要した症例に対し、アンケートを依頼。得られた結果を担当医がWeb上で登録した。期間は平成19年4月から2年間、全国224施設で実施された。調査項目はCLおよび消毒薬の種類、装用方法、CLケアの状況等であった。
【結果】357例(男性198例、女性159例)から回答が得られた。年齢は9歳~90歳(平均27.9歳)。頻回交換ソフトCL使用者は200例(56.0%)であった。終日装用CLを連続装用していたものが78例(21.8%)であった。1 day disposableソフトCLの装用期間については回答のあった39例のうち「1日」と規定通りの使用期間を守っていたものは15例のみであった。殆どが多目的用剤(MPS)を使用しており、CLのこすり洗いを毎日実施していたものは68例にとどまっていた。眼科施設での定期検査については「不定期」、「ほとんど受けていない」など受診間隔を定めていなかった例が167例(46.8%)みられた。
【結論】CL装用およびそのケアについては杜撰な実態が浮き彫りとなった。CLに関する正しい使用法についての啓発と眼科施設を含めた社会的管理体制の構築が望まれる。

3)小中高生の中にもコンタクトレンズを使用する生徒が増えてきました。院長が日本眼科医会の常任理事として会務を行っていたときに行った調査結果について、宇津見義一先生が発表されました。以下に抄録を記します。

平成21年度学校現場でのコンタクトレンズ使用状況調査
宇津見義一、植田喜一、宮浦 徹、吉田 博、三宅謙作
日本眼科医会
【目的】平成12年から日本眼科医会は3年毎に全国の小中高生を対象にコンタクトレンズ(CL)使用状況調査を実施している。平成21年に同調査を行ったので報告する。
【方法】平成21年9月から2カ月間にアンケート調査を行った。対象は小学校55校30,683名、中学校54校26,296名、高校53校42,772名、合計162校99,751名。
【結果】使用者は小学生が0.2%(平成18年0.1%、以下同様)、中学生が6.4%(5.9%)、高校生が26.6%(25.2%)、と学年が上がるとその数は増えた。種類はソフトコンタクトレンズ(SCL)は中学生が94.9%(94.7%)、高校生が93.8%(92.7%)で、1日、1週間使い捨て、2週間頻回交換、1~3ヶ月定期交換のSCLは中学生が85.5%(84.9%)、高校生が84.8%(82.7%)。2週間頻回交換SCLは中学生が65.5%(66.2%)、高校生が69.9%(70.3%)、1日使い捨てSCLは中学生が28.6%(20.8%)、高校生が21.8%(16.3%)と増加した。オルソケラトロジーは小学生が18.9%(11.1%)と増加した。ケアが必要なレンズでこすり洗いをしているは中学生が78.9%、高校生が77.5%であった。病名は角膜炎、角膜潰瘍が中学生10.9%、高校生18.3%であった。【結論】CL啓発活動を一層すすめる必要がある。

4)院長は山口大学の臨床教授として、同大学のコンタクトレンズ外来に関わっていますが、柳井亮二先生が円錐角膜に対する特殊なデザインのハードコンタクトレンズについて有用な発表をされました。以下に抄録を記します。

円錐角膜に対するベベルトーリックハードコンタクトレンズの有用性について
柳井亮二1、植田喜一2、西田輝夫2、元満浩信3、宇高健一3
1山口大・眼病態、2山口大、3サンコンタクトレンズ
【目的】円錐角膜が進行し角膜乱視が強度になるとハードコンタクトレンズ(HCL)の静止位置や動きが不安定になり、良好な視力が得られなかったり、装用感が悪化することがある。ベベルトーリック(BT)HCLはベベル部にトーリック差を設けることで強度角膜直・倒乱視眼の弱主経線のベベル幅の狭小化や強主経線のエッジの浮き上がりが改善できる。円錐角膜眼に対するBT‐HCLの臨床的有用性を検討した。
【方法】対象は山口大学病院でBT‐HCL(Twinbel Ⅱベベルトーリックタイプ、サンコンタクトレンズ)を処方した円錐角膜5例6眼(男性3例、女性2例、年齢43.8±15.5歳(平均±標準偏差))で、円錐角膜の程度はmild4眼、moderate1眼、advanced1眼で、角膜乱視は5.80±2.15Dであった。従来のHCLは球面型4眼、多段カーブ1眼、非球面型1眼であった。TR‐HCLによる矯正視力、コントラスト感度を測定し、自覚症状をアンケート調査して従来HCLと比較した。【結論】TR‐HCLはベベル部のフィッティングを改良することで円錐角膜眼のレンズの安定性や装用感が良好になる。TR‐HCLは進行した円錐角膜症例に対するHCLデザインの一つとして臨床的に有用である。



4.共催セミナー
1)遠近両用ソフトコンタクトレンズ!!-満足度を上げるコツ-


2)遠近両用シリコーンハイドロゲルレンズの臨床評価より高いVisual Performanceを目指して


3)コンタクトレンズ消毒剤の現状とヨウ素剤の可能性