山口大学医学部附属病院眼科をはじめ市内の総合病院・国立病院などとの連携により安心な医療を提供しております。

眼の疲れ

【 目の疲れ -2009年9月- 】
目の疲れを訴えて来院される患者さんはたくさんおられます。薬局で購入した疲れ目の目薬をさすと、目はスッキリするでしょうが、それで本当に疲れがとれるわけではありません。疲れの原因を考える必要があります。
見え方の悪い目で物を見ていると目が疲れます。したがって、どうして見え方が悪いのかを確認する必要があります。ご年配の方では白内障による視力低下や、緑内障による視野狭窄(見える領域が狭くなる)が原因のことがあります。糖尿病や高血圧の方では眼底出血が視力や視野に影響を与えていることもあります。その他にドライアイ、斜視、眼球運動の障害など、多くの疾患が原因としてあげられます。
私が日々の診察の中で、目の疲れの原因として最も多いと実感するのは、近視、遠視、乱視などの屈折異常や老視(老眼)などの調節異常の不適正な矯正です。

最近経験した症例を示します。
34歳の男性です。目の疲労を訴えて来院されましたが、肩のあたりがつっぱる感じで頭痛もするとのことでした。営業マンでパソコンは仕事で1日2~3時間は使用されていました。遠方(5m)の視力は右1.5、左1.5でよく見えています。近方(30cm)の視力は右0.9、左0.9でわりと見えています。ここで私が疑ったのが、両眼の遠視と調節性眼精疲労です。特殊な検査(調節麻痺剤を使用した屈折負荷検査、アコモドメータによる負荷調節検査)を行なって、上記の診断が確定しました。
視力はいいのですが、実は目の内の筋肉(毛様体筋)を無理に使って物を見ていたのです。筋肉は使いすぎると疲労します。遠視の方は特に近くを見るとひどく疲労してしまいます。この患者さんがパソコンを使用すると目が疲れるというのは、これで説明できます。 患者さんには遠視を矯正するメガネを処方しました。このメガネを使用することで、目の疲労、肩こり、頭痛の症状は良くなりました。
メガネやコンタクトレンズは物がよく見えないから使用するというだけでなく、疲れないために必要な場合もあることを知っていただきたいと思います。

一方、メガネやコンタクトレンズが適正な度数でないため、目の疲労を訴える方が数多くいます。メガネやコンタクトレンズを適正に合わせることは眼科医でも難しいことです。屈折・調節に詳しい眼科医に診ていただいて、処方せんをもらって、メガネ店やコンタクトレンズ販売店で処方せん通りのものを購入するように心がけてください。
単によく見えるメガネやコンタクトレンズではなく、快適に見える(楽によく見える)メガネ、コンタクトレンズが必要なのです。

48歳の女性です。メガネをかけると目が疲れると訴えられました。メガネをかけると右1.5、左1.2とよく見えていますが、患者さんの近視には明らかに度の強いメガネでした。このメガネは1ヶ月前にメガネ店で合わせたということでした。実はこの患者さん、1年半前に来院された際、日中はコンタクトレンズを使用しているが、コンタクトレンズをはずした時に使用するメガネを処方してほしいということで、検査をしてメガネの処方せんをお渡ししましたが、いろいろと事情があってその折はメガネ店に行かなかったそうです。その後、コンタクトレンズの調子が悪くなった場合のことを考えると、やはりメガネがほしいが、時間の関係もあって、直接メガネ店に行ってメガネを合わせたということでした。
メガネ店の店員は無資格者です。屈折異常や調節異常の検査をして、メガネを処方する行為は医療行為です。医療行為は医師、看護師等の免許を有する者(有資格者)に認められた行為で、法律を遵守するという立場から考えると、こうした行為は医師法違反です。無資格者による行為が不適正なために、度の合っていないメガネが売られているケースをたくさん経験します。高いお金を払って購入したメガネが原因で目が疲れてしまい、医療機関(眼科)を受診するというのはおかしなことです。眼科で適正なメガネを処方してもらって、その指示(処方せん)にもとづいて、メガネ店でメガネを作るようにしてください。


【 目の疲れ -2006年10月13日 読売新聞- 】
2006年10月13日の読売新聞に「「よく見える」も困りもの」という記事が掲載されました。これは当院の院長が読売新聞の取材に応じたものです。抜粋します。

目が疲れて肩こりがひどい。時には頭痛がする。近視で眼鏡をかけている北九州市の会社員有田幸(ゆき)守(こ)さん(41)は、ここ数か月、そんな症状に悩まされてきた。
仕事で1日7時間はパソコン画面を見つめる。目に悪いとわかっていても、やめるわけにはいかない。つらさに耐えきれず先月、勤務先に近い山口県下関市のウエダ眼科を受診した。
院長で山口大眼科臨床助教授の植田喜一さんは「パソコンの作業などが増え、目の疲れを訴える人が増えている」と話す。症状がひどいと、頭痛や食欲不振まで訴える人もいる。
植田さんは、有田さんの目の屈折度などを検査。持参した眼鏡も調べ、「あなたは軽い近視。今の眼鏡は度が強すぎ、遠くはよく見えても、デスクワークのような手元ははっきり見えないはず」と、目の疲れの原因を説明した。そして「仕事の際は、もう一段階弱くするか、眼鏡なしでもよいくらいです」と提案した。
「えっ」と驚いたのは有田さん。実は、ふだん使っていた眼鏡は持参したものよりさらに度が強い。数年前に眼鏡店でフレームを新調した際に検査し、「よく見えるよう、度をひとつ強くしておきましょう」と言われて作ったものだ。最近はかけるのがつらく、この日は古い眼鏡を引っ張り出してきていた。
「近視の人が陥りやすいのが、遠くがよく見える眼鏡が良いという誤解」と、植田さん。度が強ければ最初はよく見えても、やがて目に負担がかかり疲れやすくなる。疲れがひどくなると、近くだけでなく遠くを見るのにも影響が出て、さらに眼鏡の度を強くする、という悪循環に陥る。近視の人の8割は不適切な度の眼鏡をかけている、という見方もある。
目を細めるほど度が弱すぎてはダメだが、「よく見える中で最も弱いもの」を選ぶのがポイントだ。近視だと老眼にならない、というのも、よくある誤解だ。40歳を超えると、個人差はあれ、だれもが老眼になり、ピントの調節がうまくできなくなる。近視はもともと近くにピントがあっている。老眼になると、眼鏡やコンタクトレンズを外すと近くはよく見えるが、つけたままでは近くは見えづらい。遠くも近くもよく見たければ、遠近両用の眼鏡やコンタクトレンズが必要になる。
自分にとって「楽に見える」矯正方法を選ぶことが大切だ。

◆眼鏡・コンタクトレンズ選びのポイント◆
 ・まず眼科専門医で検査、処方してもらう
 ・「よく見える」ではなく、「楽に見える」ものを選ぶ
 ・高価なレンズは、自分に必要な機能があるか、よく検討を
 ・デザインだけを重視するのは禁物。目の中心部がレンズの中心にくるものを
 ・強度の近視や乱視は、コンタクトの方が有効
 ・遠近両用では見づらい人も。遠方用、近方用を別に作るのも良い




【 目の疲れ -遠視とメガネ- 】
2009年4月22日に37歳の男性が、目が疲れるという訴えで受診されました。患者さんは工場勤務で細かい作業をしているということでした。
遠方の視力は右が1.2、左が1.5です。近方の視力も右1.0、左1.0とよく見えていましたが、詳しく検査すると軽い遠視であることがわかりました。
遠視は目の中の筋肉を使えば見えますが、長時間筋肉を使い続けると疲れやすくなります。とくに近方を見ると疲れます。
患者さんには上記のことを説明して、近方用のメガネをかけて作業をすることをすすめました。
メガネを処方して4ヶ月経過して再来されたときに尋ねたところ、目の疲れはだいぶ良くなったと答えられました。
メガネは単に見えるためのものではなく、目が疲れないためにも使用するということを再認識したケースでした。